第5章 食欲がある人は長生きしやすい
食欲がある高齢者は長生きの傾向があることが明らかになっています。
また別の研究でも、高齢者を食が細い人、普通の人、食欲が旺盛な人に分けて解析した結果、食が細い人は食欲が旺盛な人に比べて死亡率が2倍以上高いことがわかりました。
咀嚼力の低下や薬の副作用、孤独感や抑圧など心理的な要因、家族などの環境要因も食欲に悪影響を及ぼしますが、それらの要因を差し引いた後も死亡率は1.5倍高かったのです。
また食欲が旺盛な人は食が細い人に比べて、肉、魚、卵、野菜、果物の摂取量が多く、ビタミンB1、ナイアシン、鉄、リンなどの栄養素の摂取量も多く、吸収率もよいことがわかっています。
肉や魚が食べたくなくなる、または肉や魚を食べられなくなるという人は、老人脳のリスクが上がります。
肉には老人脳の予防に必要な栄養素がしっかり入っているからです。
太りすぎも、やせすぎも、死亡リスクを高める
スーパーエイジャーの特徴のひとつに、「太りすぎている人が少ない」という事実があります。
肥満はもともと健康によくないと言われますが、肥満度が高いと脳の白質が薄くなり委縮してしまう傾向にあることがわかっています。
肥満レベル4(BMI45.5)の人の脳は、外側が縮んで内側にも空洞ができていて、普通の人と比べて脳が10歳も老化していたそうです(肥満度はBMIという指標でされますが、25以上が肥満で18.5以下が低体重)。
ではやせたほうがいいかというと、それも正しくありません。
なぜなら、高齢になってからのやせすぎはかえって死亡率を高めてしまうからです。
65歳以上の高齢者1万8727人を調べたリサーチでは、やせている人は女性で129日、男性で212日も寿命が短くなっていることが報告されています。
しかも、日本の高齢者は世界的にもやせている人が多いことが知られています。
イギリスやアメリカと比べてもBMIが18.5以下の低体重の人が、約5~10倍もいるようです。
つまり、欧米に比べて本来もっと長生きできた人たちがより短命になってしまっている残念な事実があるわけです。
日本で35万人に対して行った調査でわかったことは、意外にも太りすぎよりもやせすぎのほうが死亡リスクが高かったことです。
ちなみに最も死亡リスクが低かったのは、男性が「肥満度Ⅰ」(BMI25~26.9)、女性は「標準だが肥満に近いレベル」(BMI23~24.9)でした。
そういった意味で、若いときはやせるのもいいですが、60歳以上になったら、太りすぎでもやせすぎでもない、やや小太り気味が脳にも体にも一番よい状態と言えます。
「80歳でも脳が老化しない人がやっていること より」
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アメリカの月刊誌『リーダーズダイジェスト』は、“赤いビタミン(ビタミンB12)が悪性貧血の患者を救う特効薬だ”と報じてセンセーショナルな話題を提供しました。
以来、“ビタミンB12”は、世界的に研究者の注目を集め、それに関連した研究にはいくつものノーベル賞が与えられてきました。
そして今では、ビタミンB12は、悪性貧血のみならず神経や免疫系にも効果があることが明らかになり、高齢者のうつや認知症の予防等に利用されています。
食べ物に含まれるビタミンB12は、そのままの形では吸収されません。
胃から分泌された内因子と結合する必要があるのです。
このために胃を切除した人では、ビタミンB12が欠乏して貧血をおこすことがあります。
現在60歳以上の人の20パーセントでビタミンB12の欠乏が見られます。
これは歳をとると胃の機能が低下し、内因子の分泌が低下するからです。
また、主に動物性食品にしか含まれないというビタミンなので、野菜中心の食生活の人や、ダイエットをしているなど食事の量が少ない人は、ビタミンB12を補った方が良いとされています。
胃の病気、ストレスなどでも不足します。
血液検査では見つけられないような軽度のビタミンB12の欠乏でも、認知症に似た神経異常を引きおこすことがあります。
とくに高齢者では、ビタミンB12の値が基準値の範囲にあっても、それが下限値の場合には、記憶障害をおこすことが知られています。
近年、日本人の死因の上位占めているガン・心筋梗塞・脳血管系の疾患、そして高血圧症などの生活習慣病の多くは、戦後、日本人の食生活が欧米化し、動物性食品を多くとるようになったことに起因すると言われています。
長寿のためには、動物性食品を控えた方がよいという事ですが、一方では動物性食品を摂らないことからビタミンB12を摂取できなくなる恐れがでてきます。
ビタミンB12を摂取できないことで、脳のビタミンとしての作用が欠落してしまうという深刻な問題も起きています。
ビタミンB12は、脳からの指令を伝達する神経を、正常に働かせるために必要な栄養素です。
十分にあると、集中力ややる気が高まり、不足すると、神経過敏などの症状が起こりやすくなります。
また、ビタミンB12や葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。
さらに、ビタミンB群は、8種類すべてが互いに協力しあって体のエネルギーを生み出す働きに関わっているため、一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。
ビタミンB12について?