第9章 コレステロールと老人性うつの関係性
最近注目されているのが、老人性うつとコレストロールの関係です。
老人性うつは65歳以上の人が患ったうつ病のことで、その数は全体のうつ病患者数の4割にも及んでいます。
やる気が起きない、興味や関心がわかなくなる、何をしても喜びを感じられない、気分がどんよりする、そんな症状が続きます。
老人性うつになると脳の状態が下がってしまい、認知症まで発症しやすくなります。
昔はコレステロールを摂ることは心筋梗塞のリスクを高めるため、体によくないとされていました。
これは正しくて、食事や薬物療法でコレステロール値を減らすと、心筋梗塞のリスクは減ります。
しかし、コレステロールを減らすと、同時に老人性うつなどの自殺・事故死などが78%も増加し、結果として全体の死亡率まで7%も上がることがわかっているのです(がん死亡率も43%増えます)。
コレステロールはもともと細胞膜の大切な材料で、全体の3分の1が脳や神経系に存在します。
少なくなると細胞膜が不安定になって、幸せホルモン・セロトニンをうまく取り込めなくなり、幸せを感じにくい体質になります。
その結果、老人性うつになることが指摘されています。
カルフォルニアで70歳以上の男性を調べた調査では、コレステロール値の低い人は高い人に比べて、うつの発症率が約2.7倍も高くなってしまったそうです。
高齢になってコレステロール値が低くやせている人は、幸せを感じにくく、少し太っていたほうが幸せになれる。
驚きましたが、これが真実のようです。
60歳以降になると体でつくられるコレステロール量は減っていくため、高齢者ほどコレステロールが豊富な食材(卵、肉、魚、乳製品など)を摂ることが大切です。
スーパーエイジャーも卵や肉、魚、乳製品が好きな人が多いのですが、とても納得です(ただし、摂りすぎには注意してください)。
「80歳でも脳が老化しない人がやっていること より」
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血管力を高める食事は、炭水化物(糖)、塩分を少なめに、HDLコレステロール値を上げる食材を選ぶのが基本です。
これに外せないものが、たんぱく質を十分に摂る食事を心がけることです。
血管はアミノ酸、たんぱく質とコレステロールなどの脂質によってつくられます。
アミノ酸は普通の食事をしていれば十分にとれるので、動物性たんぱく質を意識しましょう。
たんぱく質はとくに血管中膜の結合を強くします。
動脈壁そのものを強くするので、脳出血などを防ぎます。
また、脳の機能にとって神経伝達物質がきわめて重要な存在です。
ドーパミン、GABA、セロトニンがよく知られていますが、アセチルコリンも重要な役割をもつ神経伝達物質のひとつです。
記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。
その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。
脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が「卵黄」です。
なお、レシチンをアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。
ビタミンB12について?