第2章 「できない」ことを叱らず、「できる」ことを褒める
教育の世界では、「子どもは褒めて伸ばせ」とよくいわれます。
褒められたら誰でも嬉しいので、それが成功体験となって前向きになり、「できない」ことが、どんどん「できる」ようになる効果があるのでしょう。
褒めて伸びるのは、子どもだけでなく、認知症の患者さんも同じです。
前述したボランティア電話で、毎月の合言葉と日付の確認を終えた後、「じゃあ最後に、いつものをやろうか」と声をかけてから、「あいうえお」「かきくけこ」といったあいうえお表の行を大きな声で一緒に唱えています。
そして見事に声に出してやりとげたら、「今日も絶好調じゃない!」とか「スゴい、よくできたね!」などと褒めちぎるようにしています。
電話ですから、患者さんの表情まではわかりません。
ですが、褒めると、「ありがとうございます」「よくできましたか!」と、患者さんの声のトーンが途端に明るくなります。
きっと、顔色も明るくなっているでしょう。
褒められて嬉しくなるのは、子どもも認知症の患者さんも同じなのです。
認知症が進むにつれて「できる」ことが減り、「できない」ことが増えてきます。
子どもの頃と、時計の針が逆行するのです。
着替え、トイレ、食事、入浴……。
あたり前のようにできていたことが、認知症の進行によってできなくなってくると、家族などの介護者から「なんでこんなことができないの」と叱られる機会が増えます。
子どもを叱ると、どうなるでしょうか?
ションボリしてやる気を失ってしまいますよね。
それは認知症の患者さんも同じです。
認知症の患者さんは、叱られたとしても、自分が何をしたかを忘れてしまいます。
悪いことをしているという自覚は、まるでありません。
家族などの介護者は、認知症の患者さんの言動を、理不尽に感じる場面が多いでしょう。
しかし、患者さんの立場になってみると、叱る介護者の言動こそが理不尽に感じられるケースも少なくないのです。
「わかってくれない!」という思いで患者さんが孤独を深めると、症状が悪化する恐れがあります。
家族などの介護者側は、「できない」ことを指摘するのではなく、「できる」ことを見つけて褒めるようにしてください。
自分が味方だと思っている人からほめられると、患者さんは嬉しいものです。
孤独に陥らず、自尊心も高まります。
「できる」ことを増やして、認知症による問題行動を減らす効果も期待できるのです。
※ポイント 認知症の患者さんは「できたこと」を褒めちぎるようにしてみましょう
「一生ボケない習慣 より」
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認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。
ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。
脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。
「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
近年、動脈硬化の原因として新しく注目されているものに、ホモシステインというものがあります。
ビタミンB12、葉酸、ビタミンB6の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。
また、ビタミンB12や葉酸をはじめとするビタミンB群は、ミネラル、アミノ酸などの栄養素と協力し合っているため一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。
ビタミンB12について?