第2章 「許せない!」と感じたときの解消テクニック
高齢者の中には、自分との対立点を見つけて、すきあらば他人と角突き合わせるという人がいます。
まわりから疎んじられるのは当然ですが、これでは上機嫌な日々を送ることはできません。
70代、80代で孤独感に苛まれながら淋しい老後を過ごすことになります。
こうしたことになるのはなぜでしょうか。
1.自己愛が異常に強い→他人を敬愛できない。自分と異なる考え方が許せない
2.白か黒か決めたがる→「ゼロか100」思考
3.敵か味方で他人を判断→敵でもない、味方でもない人がいるという考え方ができない
4.感情を爆発させる→論理的思考を放棄して暴力的言動に走る
これが主な特徴です。
考えてみれば、こうした要素は誰もが、程度の差こそあれ、備わっている要素かもしれません。
とくに幼児期にはこれが原因で感情が制御できなくなり、大人が手を焼く事態がしばしば生じます。
脳の仕組みで考えると、理性を司る大脳皮質という部位が未発達のため生じると考えられます。
しかし、成長とともにさまざまな経験や学習によって、理性的思考ができるようになり、暴力的言動を抑えることができるようになります。
こうしたプロセスを経て、ほとんどの人は1~4までの課題を克服していくのですが、これを克服できないまま成人になってしまうケースもあります。
その原因は、脳の構造そのものの問題、尋常ではない体験によって生じたトラウマなどにあると考えられます。
明らかに病気と認められる場合には、専門医の診察を経て適切な治療が必要となります。
自分を俯瞰的に見るクセをつける
一方、治療が必要とまではいかないものの、1~4の傾向が強くみられる人は少なくありません。
高齢者の場合、加齢による脳機能の劣化、認知症の進行などによって、こうした傾向が強まるケースもあります。
しかし、「歳だから仕方がない」と諦めてはいけませんし、諦める必要もありません。
そのためには意識的に1~4の症状に陥ってないかを自分に問う習慣を身につけることです。
「意識的にって、いうけど……」
そんな声が聞こえてきそうです。
たしかに自分の脳の中で起こっているトラブルを、自分の意識(=脳)で解消することなど可能なのか、と思われるでしょう。
しかし、人間の脳には自分の言動、立ち居振る舞いを俯瞰して客観で気に見る能力が備わっています。
「あれ、オレ、いまバカなこといったかな?」
「なんてひどいことをしようとしたんだろう」
「おっと、勘違いするところだった」
日常生活でもやっていることですが、こんな調子で自分の考えたこと、行動しようとしたことを、頭の中で検証・修正することができます。
たとえ、軽度認知障害(MCI)あるいは認知症と診断されたとしても「意識的に」言動を律することは十分可能です。
それを徹底しようと思うなら、つねにメモを持ち歩いたり、家の壁に標語として張っておいたりしてもいいでしょう。
「他人の意見を尊重」「ゼロから100まで101個の数字」「自分の意見に中立、無関心の人もいる」「理性を忘れるな」などといった風に……。
さらにおすすめしたいのが、自分が1~4の状態に陥っていると感じたら、その状況を実況中継してみることです。
「ああ、○○さん怒っています」
「理屈を放棄しています」
「他人を敵か味方かで、強引に色分けをはじめています」
「おっと、いけない!赤鬼状態です。眉間にシワも出はじめています」
男性なら、古舘伊知郎風、安住紳一郎風、徳光和夫風、女性なら、黒柳徹子風、上沼恵美子風、清水ミチコ風など、スタイルは問いません。
「いつまでもハツラツ脳の人 より」
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記憶力の減退も、脳の老化を示す典型的な症状ですが、記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。
その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。
脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
また、脳を酷使するときには、たくさんのビタミンB群が消費されています。
B群は脳の働きに重要な役割を担っているのです。
神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。
ビタミンB12について?