第2章 「怒りの感情抑制」を促す簡単テクニック
他人との対立点を探してばかりの生活など、愉快なはずがありません。
対立点探しといえば、「アラ探し」も似たようなものです。
たとえば「アイツの恰好はなんだ!」「あの子のお化粧、おかしい」「うちの嫁が……」などといった「アラ探し」も、気持ちはわかると感じることもありますが、口に出さずに、できるかぎりスルーしたほうが、いわゆる精神衛生上はいいでしょう。
他人のアラを感じたり、陰で愚痴ったりしているだけならまだいいのですが、違法性があったり、公序良俗に著しく反したりしているわけでもないのに、そのアラを見逃せないという人もいます。
怒りの感情をどうしても制御できないのです。
最近、世間を騒がせているあおり運転などは、その典型かもしれません。
あおり運転をする人は「ナメられた」「バカにされた」「生意気だ」といった感情からなのかも知れませんが、相手や自分の危険を顧みず、「報復」を試みる心理は尋常ではありません。
人によっては、ハンドルを握るとF1レーサーかカーチェイスのヒーローにでもなった気分になってしまうのかもしれません。
それが高じて、気に入らないドライバーに対する「暴力的懲罰の執行者」に変身してしまうのです。
本人にとってはそうではないのかもしれませんが、ささいな他人のアラを看過できずに、懲罰を実行しようとするわけです。
これは、心理面で分析すると、自己愛が傷つけられ、怒りの感情が爆発し、瞬時に異常な報復心が芽生えた結果の行動と考えられます。
クルマの中という閉鎖性が感情の抑制能力を失わせたのかもしれません。
怒りの抑制に有効な深呼吸
最近、スーパーや飲食店などで、高齢者が逆切れして、従業員に暴言を吐いたり、暴力を振るったりする事件がメディアに取り上げられます。
こうした事件は、統計的には高齢者の比率は極めて低いのですが、多くのメディアが「また高齢者が!」といったトーンで伝えます。
老年精神医学に長年携わってきた人間として、こうしたメディアのあり方は、由々しき事態と考えますが、この傾向に歯止めがかかりません。
それはさておき、こうした感情の爆発ですが、これを抑えるテクニックを紹介したいと思います。
・怒りの感情が芽生えて、爆発しそうになったら1、2回深呼吸
たったこれだけです。
脳の仕組みから考えてみましょう。
怒りの感情とその抑制には、脳の「辺縁系」という部位と「大脳皮質」という部位が関わっています。
辺縁系→感情を司る
大脳皮質→理性を司る
そして、辺縁系からの情報伝達と大脳皮質からの情報伝達には、タイムラグがあります。
その差は約2秒といわれています。
つまり、「頭にきた」から「冷静になろう。怒っても仕方がないな」まで約2秒の時間がかかるわけです。
実際には脳が発熱しているわけではありませんが、いわば脳をクールダウンさせるわけです。
先日、米メジャーリーグの大谷翔平選手の試合を観ていたときのことです。
あわやデッドボールというシーンがありました。
すると、大谷選手は、バッターボックスを外し、1回深呼吸をしました。
まさに脳をクールダウンさせ、理性を働かせながら、次の配球を考えているように感じられました。
そして、その打席でヒットを放ちました。
テレビ中継を観ていると、日ごろから、大谷選手は表情が穏やかで、まわりの人間ともフレンドリーな関係を築いているように感じます。
多くのファン、チームメイト、他球団の選手からもリスペクトされ、慕われているようです。
多分それは、大谷選手の感情の抑制能力の高さと無関係ではないでしょう。
彼のことですからありえないことですが、かりに、彼が怒りを爆発させ、相手投手に殴りかかるような「暴力的懲罰の実行者」になっていたら、退場処分はおろか、大きなケガを負っていたかもしれません。
いずれにせよ。怒りによる暴挙は、なんの役にも立ちません。
あなたも怒りの暴挙を回避したいなら、深呼吸をして、大谷選手のことを思い浮かべてみてはいかがでしょうか。
「いつまでもハツラツ脳の人 より」
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ハーバード大学が20年にもわたって行なった調査によると、激しい怒りの後には、急性心筋梗塞や狭心症などの心臓発作を起こすリスクが4.7倍まで急上昇するそうです。
ただ、血管に悪いとわかっても、怒りや嫉妬といった感情は自然に湧き上がってくるもの。
完全になくすということはできません。
避けることはできないのなら、湧き起こってきた怒りを以下に鎮めるか、ストレスが持続しないように、いかに発散するかが大事です。
カーッと頭に血が上ったとき、簡単にできるリラックス法が、息を吐くということ。
ふーっと腹式呼吸で息を吐くと、副交感神経の働きを強めてくれます。
オフィスでも、どこでもすぐにできるのでおすすめです。
ビタミンB12やB6、葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。
ホモシステインはLDLと一緒になり血管壁にコレステロールを沈着させます。
また活性酸素と一緒になり、脂肪やLDLの過酸化、血管内皮細胞や血管の平滑筋の異常を引き起こします。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
ビタミンB群は、体に入った栄養成分をエネルギーに変えるときに不可欠なビタミンの仲間です。
ビタミンB12について?