第3章 表現することで得られる達成感が、脳を喜ばす
エッセイを書くという行為は、さまざまな情報の入力と出力を繰り返して脳を活性化しますが、それ以外にも脳に好影響をもたらします。
書くという行為について考えてみましょう。
それは頭の中に生じた漠然とした思いを素材にして、意識的に思考を巡らせて整理し、他人にも理解される形に変えることです。
手書きであれ、パソコンであれ、目にはみえない「思い」を、目に見える「文字」にすることです。
漠然とした思い(感性的認識)→言語化→整理された情報(理性的認識)
つまり、エッセイを書くことは、論理的思考を促す行為といえます。
この論理的思考こそがハツラツ脳の構成要素なのです。
ですから、会話などの単純なコミュニケーションによる情報の出力・入力以上に、脳の活性化に役立つといっていいでしょう。
忘れてならないのは、原稿用紙、パソコン上のワードに残すことによって得られる達成感です。
気分の高揚感は、ものを書く以外のことに対しても前向きな姿勢をもたらします。
ただ読むだけ、ただ感じるだけから「表現=出力」へ
日常の雑感を言語化するエッセイ執筆は、比較的誰にでもはじめられることですが、詩、俳句、小説であってももちろん脳の活性化に役立つことは間違いありません。
自分の書いたものを読み返したり、家族や知人に読んでもらって修正点を聞いたりして、さらに磨き上げたりするのもいいでしょう。
大切なのは、他人から良い評価を得ることではなく、トライして形にすることですから、なにがしかの好評を得られれば達成感を味わえます。
知人の奥さんは82歳ですが、新聞を1時間以上かけて読むのを日課にしていました。
とくに読者投稿のページはくまなく読んでいました。
「へえ」「なるほど」「同感だ」など感じることはあったものの、そこから一歩踏み出して、自らの思いを綴ろうとまでには至りませんでした。
しかし、いつしか彼女の脳にトライしたいという意思が芽生えたようです。
「自分でも書いて、投稿してみようかしら」
そう思った彼女は、終戦直後の貧しかった幼少期の思い出を綴り、投稿しました。
もちろん、掲載されるなどとは思っていませんでした。
ある日、いつものように読んでいた新聞の読者投稿欄で自分の名前を見つけて驚き、大変喜んだそうです。
その後、新聞以外にも、雑誌などに投稿するために、毎日、原稿用紙に向かうようになったとか……。
達成感を得ることで、新たなトライへの「張り合い」を見つけたということでしょう。
脳が喜びを感じるのです。
いずれにせよ、いくつになってもこうした前向きのトライを実行する人の脳は、ハツラツ度を失うことはないでしょう。
エッセイなどの言葉を駆使してのトライばかりではありません。
塗り絵、絵画、イラスト、あるいは写真など、自分の感性を表現する方法はたくさんあります。
脳に浮かんだ思いを消えるがままに放っておくのではなく、自分に合ったなんらかの手法で出力することを心がけてはいかがでしょうか。
「いつまでもハツラツ脳の人 より」
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寒暖の差、生活の変化が激しい毎日は、私たちの身体にも大きなストレスを与えます。
そんな日々が続くと、自律神経は、その変化に対応しきれなくなって、やがて疲れやめまい、不眠、頭痛といった症状が現れてきます。
とくに人間関係の変化は想像以上に心身への影響が大きい。
気分が落ち込んだり一時的にうつ状態になってしまうこともあります。
とはいえ、そのうちに治ってしまうことが多いので、うつ状態でも必ずしも病気とは言えません。
しかし、落ち込みの程度が重い時や、落ち込みが長引いてしまうと、人の意欲は奪われて行動にも影響を及ぼします。
私たちの脳の中で司令塔のような役割をしているセロトニン神経という神経細胞が弱ってきており、軽い不調からうつ病、パニック症候群、さまざまな依存症などを引き起こす原因になっています。
この現象は大人から子どもまで老若男女に広がっています。
セロトニン神経は、日を浴びることや意識した呼吸、簡単な運動をすることなど日常生活に少し工夫を加えることによって鍛えることができます。
脳には無数の神経細胞があり、その神経細胞の末端からセロトニンやアセチルコリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を放出しています。
それらによって次の細胞に情報を伝えていき、それが網の目のようにいっせいに行われることで、情報が瞬時に伝わり、手や足などの末端まで伝達されていきます。
しかし、その伝達情報がうまくいかないと、脳が興奮して抑制が効かなくなり、イライラしたり、落ち着かなくなったりします。
イライラしやすいときは、脳の神経伝達物質であるセロトニン、アセチルコリン、ドーパミンなどが不足していることが考えられます。
そのため、これらの材料となるアミノ酸と、アミノ酸を取り込むために必要な糖分やビタミンB12の不足を疑ってみましょう。
また、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が足りなかったり、神経伝達物質を放出するときに働くカルシウムが不足したりしているのも原因のひとつと考えられます。
ビタミンB12について?