海馬神経細胞の増殖

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海馬神経細胞の増殖

 

海馬は脳の中でも脆弱な部分で、一時的な心停止による酸素不足で容易に神経細胞の壊死を起こします。

これは海馬が大量の情報を処理するために莫大なエネルギーを使っているためと考えられます。

また海馬は脳の中で大人になっても神経細胞の増殖が起こる数少ない部位の一つです。

学校でいろいろなんことを学び、社会に出てさらに経験を積んでいくと、それらの記憶を処理し、呼び起こすためには神経細胞ネットワークのつなぎ替えでは足りなくなり、新たな神経細胞が必要になります。

海馬はまさにそれをおこなっている部位なのです。

 

一方で、海馬における神経細胞の増殖が記憶の忘却にも関係するという報告があります。

海馬で新たな神経細胞がネットワークに組み込まれると、過去に保存した記憶とつながっていた経路が失われてしまい、思い出せなくなってしまうというのです。

大人になってからの記憶は思い出しやすいが若いころの記憶は思い出しにくいというのも、単に古い記憶ということだけではなく若いころの方が海馬における神経細胞の増殖が活発でネットワークの組み替えが多いためだそうです。

実際、私たちは3歳以前に経験した出来事をほとんど思い出せません。

 

大人の海馬では神経細胞増殖が起こらない?

 

海馬神経細胞の増殖が大人になっても続くことが、記憶にとって重要だということは多くの研究者が認めていたのですが、「大人の海馬では神経細胞増殖が起こっていない」という論文が、2018年3月7日『ネイチャー』という学術雑誌に載りました。

カルフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者たちはこの論文で神経細胞の増殖が見られたのは13歳までで、それより年上の人の脳では神経細胞の増殖は見られなかったと報告しています。

実はこの内容は2017年11月13日にアメリカ・ワシントンD.C.でおこなわれた神経科学会の年会ですでに報告されており、研究者の間で話題にはなっていたのですが、『ネイチャー』誌がその論文を掲載するとは意外でした。

 

 なぜかと言うと、この論文に書かれた実験法では正しいデータを見つけるのが難しいからです。

献体された死後の脳で分裂したばかりの若い細胞を見つけるために、若い細胞にだけ存在するタンパク質に標識をつけてから顕微鏡でその数を計測するのですが、タンパク質と標識の結合は、死後どれくらいの時間がたっているかということや、脳を保存するために使用した薬剤などによって影響を受けます。

この論文に述べられている実験条件では標識を結合しにくいと断言する専門家もいます。

子供の脳には若い細胞が多いから標識が少し結合したが、大人の脳ではその数が少ないので結合を検出できなかっただけで、増殖が見られなかったとするのは早計と考えられるのです。

 

やはり大人の海馬細胞の増殖は起こっている

 

『ネイチャー』誌の論文から1ヵ月後の4月5日に「歳をとっても海馬神経細胞の分裂は起こっている」という論文が別の学術誌『セル・ステムセル』に掲載されました。

実験のやり方は『ネイチャー』誌の論文のものと同じですが、この研究で使われた脳はコロンビア大学献体された28人(14~79歳まで)のもので、精神病の病歴がなく、抗うつ剤などを使用していなかった“健康な”ものだそうです。

脳の保存もすべて一定の手順に従ったものだと強調しています。

それらの脳から海馬を切り出して調べたところ、歳を取った脳でも若い脳と同じように新しく分裂した細胞が見られたと報告しています。

ただ、歳をとった脳では新しい血管が少なく神経細胞間の接続もそれほど多くなかったそうです。

海馬の神経細胞は歳をとっても分裂していますが、神経細胞間の接続減少が記憶や学習能力の劣化に関わっているようです。

「老化と脳科学 より」

 

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脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。

脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。

40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。

脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。

死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。

しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば、低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。

 

記憶のネットワークを活性化する働きをしているのが、脳の海馬という組織であることはよく知られています。

その海馬には、アセチルコリン系神経が集中しているのです。

脳が老化し、萎縮してしまうアルツハイマーとの関係はとくに深く、アルツハイマーの脳ではアセチルコリンが減少していることから、アセチルコリン不足がアルツハイマーのひとつの原因とも考えられています。

 

アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。

同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。

通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。

レシチンアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。

とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。

血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。

これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。

そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。

なお、レシチンアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。

その中でも重要なものがビタミンB12なのです。

アルツハイマー認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。

 

ビタミンB12について?

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