◆「サバイバルバイアス」のある健康情報に気を付ける
現在、日本の百寿者(センテナリアン)は約7万人おり、この方々を対象にした長寿の研究がさまざまな角度から進められています。
世間では百寿者の条件として「開けっぴろげの性格」「ものに動じない」「よく笑う」「食べ物をよくかむ」ことなどが挙げられるようですが、現時点では、あまり確かな科学的な裏付けはないようです。
こうした根拠が脆弱な説がはびこる理由のひとつに「サバイバル(生存者)バイアス」が挙げられます。
俗ないい方をすれば「残ったもん勝ち」、あるいは「死人に口なし」バイアスです。
歴史は勝ち残ったものによって書かれていきます。
たとえ、それが事実とは異なっていても、もはや、それを証明する人はすでにいませんし、たとえいたとしても覇者の前には口も閉ざすしかありません。
百寿者は、いわばその勝ち残った人たちです。
もし彼らの何人かが「よくかんで食べる」ことの大切さを主張し、そして彼らが有名人であれば、なおのことそのメッセージがマスコミに取り上げられ、人口に膾炙(かいしゃ)していきます。
しかし、よくかんで食べていたにもかかわらず50歳で早死にした人も多くいるはずなのに、その事実は、もちろん取り上げられません。
その結果、「百寿者はよくかんで食べる」ことがひとつの真実であるかのように語り継がれていきます。
「開けっぴろげな性格」「よく笑う」なども、同じことでしょう。
健康情報は玉石混交です。
一部の健康情報を“石”と見る最大の理由は、依って立つ根拠が希薄だからです。
出典も曖昧なら、エビデンスも曖昧。
全く提示されていないものもあります。
そして、統計解析がほとんどなされていません。
これでは、一見どんなにそれらしくとも、とても信用することはできません。
しかし、中には健康に本当に役立つ、貴重な情報もあります。
それらを見つけ、採用し、活かしていく。
こうしたリテラシーや情報処理能力が、これからの時代、とても重要になってきます。
いかにニセモノを避け、ホンモノにたどり着くか。
それにはいくつもの罠(トラップ)を乗り越えなくてはなりません。
思いつきや直感に頼らず、背景にある論理や事実を一つひとつ確かめて、最後は自分の判断で情報を取捨選択する習慣を身に付けることが大切です。
そのためには、私たち人間がこれまでどのような道程をたどり、今日繫栄するに至ったかに思いを馳せなければなりません。
人間の体のつくりや仕組みを人類史という長い時間軸でとらえてみると、情報の真偽がおのずと見えてくるようになります。
人生100年時代、ウェルエイジング(百寿者のように健やかに老いていく)を実現していくためには、人類の歴史から学ぶ謙虚さも大切なのだと思います。
テレビやインターネットによってさまざまな情報が飛び交う現代は、あっという間に健康情報が独り歩きして一部は「神格化」していきます。
この傾向は強まることはあっても、衰えることはないでしょう。
その情報に振り回されないためにも、情報を鵜吞みにせず裏付けを探すことが大切だと思います。
「老けない人は何が違うのか より」
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今から60余年前、アメリカの月刊誌『リーダーズダイジェスト』は、“赤いビタミン(ビタミンB12)が悪性貧血の患者を救う特効薬だ”と報じてセンセーショナルな話題を提供しました。
以来、“ビタミンB12”は、世界的に研究者の注目を集め、それに関連した研究にはいくつものノーベル賞が与えられてきました。
そして今では、ビタミンB12は、悪性貧血のみならず神経や免疫系にも効果があることが明らかになり、うつや認知症の予防等に利用されています。
食べ物に含まれるビタミンB12は、そのままの形では吸収されません。
胃から分泌された内因子と結合する必要があるのです。
このために胃を切除した人では、ビタミンB12が欠乏して貧血をおこすことがあります。
現在60歳以上の人の20パーセントでビタミンB12の欠乏が見られます。
これは歳をとると胃の機能が低下し、内因子の分泌が低下するからです。
また、主に動物性食品にしか含まれないというビタミンなので、野菜中心の食生活の人や、ダイエットをしているなど食事の量が少ない人は、ビタミンB12を補った方が良いとされています。
胃の病気、ストレスなどでも不足します。
血液検査では見つけられないような軽度のビタミンB12の欠乏でも、認知症に似た神経異常を引きおこすことがあります。
とくに高齢者では、ビタミンB12の値が基準値の範囲にあっても、それが下限値の場合には、記憶障害をおこすことが知られています。
ビタミンB12について?
http://www.endokoro.com/libra/vitamin01.html
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