第2章 離れて暮らす家族と電話で言葉のやりとり

第2章 離れて暮らす家族と電話で言葉のやりとり

 

高齢のご両親と暮らしている、みなさんにお願いです。

どうぞ1日1回、連絡してあげてください。

 

親御さんが1人暮らしならなおさら必要な気配りです。

そこで生まれた会話が孤独を癒し、離れて暮らす高齢者の脳を働かせる貴重な機会となります。

ちょっとした気遣いですが、それが認知症予防に役立つのです。

 

そうお願いすると患者さんの家族などから、「連絡は電話ではなく、メールやLINEでもいいですか?」という質問をいただくことがあります。

 

音信不通で何も連絡しないよりは、メールやLINEで連絡するのもよいでしょう。

しかし、やはり電話をかけたほうがいと思っています。

 

古い人間だから、そういうのではありません。

会話でコミュニケーションをとるほうが脳の刺激になるので、電話で連絡してほしいのです

 

携帯電話会社には、1回5分以内または10分以内の通話なら、いくらかけても無料、または定額というサービスを提供しているところもあるようです。

ご機嫌伺いと思い出し作業のお手伝いなら1回3分程度で終わるでしょうから、こうしたサービスを活用してみるのもよいでしょう。

 

また、LINEやフェイスブックにも音声通話やビデオ通話の機能がありますから、もしご両親が使いこなせるようなら、大いに活用してください。

音声だけでなく、動画とともに会話したほうが、お互いに表情を読みとりながら、ちょっとした変化にも気づきやすくなるでしょう。

 

私が医者になる教育を受けたのは、70年ほど前のことです。

 

いまのようにコンピューター断層撮影装置(CT)もなければ、磁気共鳴画像装置(MRI)もありませんでした。

血液検査でわかることも限られていました。

 

そこで医者には、自らの「五感」を最大限に駆使して、患者さんの健康状態を探り出すことが求められていました。

若いころは、父や先輩医師たちから、「患者の声を聞け」「医者とは話す動物だ」などとよく諭されたものです。

 

その時代の診察は、漢方の診察方法である「四診」に近いといえるでしょう。

 

四診とは、「望診」(視覚による観察)、「問診」(患者さんに状態を尋ねること)、「聞診」(患者さんの声や音を聴覚で聞くこと、嗅覚でにおいを嗅ぐことも含まれる)、「切診」(触覚で患者さんに触れて診察すること)の4つを指しています。

 

何を聞き、何を話すかという内容も重要ですが、それ以上に肉声には声の高さ、明るさ、大きさ、話すときの速さ、口調といった多くのリアルな情報が含まれています。

CTもMRIもなかった時代の医者は、肉声から患者さんの状態を探り出そうとしていたのです。

 

診察の際、問診票に健康状態を書き込んでもらうことはあります。

ですが、あらためて患者さんと話し、その声を聞いてみると、問診票では得られなかった情報が手に入ります。

 

同様に、メールやLINEで文字をやりとりするより、電話で話をするほうがはるかに情報量は多いです。

文字のやりとりより、当意即妙の受け答えが個必要ですから、それだけ脳も活性化されやすいのです。

 

どんなに年をとっても親は親、子は子です。

わが子から電話がかかってくると、親御さんは自分のことはそっちのけになり、子どもの声から健康状態を探ろうとするでしょう。

 

音声でのコミュニケーションは情報量が多い分だけ、親御さんの脳はより活発に働いて血液量も増えると期待されます。

 

※ポイント メールやLINEも悪くはないですが、できるだけ会話をしましょう

「一生ボケない習慣 より」

 

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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。

脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。

40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。

脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。

死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。

しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。

 

物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。

アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。

同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。

通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。

レシチンアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。

とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。

血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。

これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。

そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。

 

なお、レシチンアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。

アルツハイマー認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/