第1章 「ありがとう」を口ぐせにする
エレベーターを利用しているとき、気がつくことがあります。
たとえば降りる際、気を利かせて「開」のボタンを押して、同乗者を先に降ろしてあげようとするのですが、こちらに見向きもせずに降りていく人がいます。
感謝されたいからやっているわけではありませんが、やはり釈然としません。
大仰な挨拶は必要ありませんが、「どうも」とひと声かけるとか、軽く頭を下げるくらいのことはしてもいいのではないかと感じてしまいます。
世代を問わず、そうしたタイプの人はいますが、あたかもそれが特権であるかのように横柄な態度を見せる高齢者には首をかしげたくなることがあります。
もしかすると認知機能に問題を抱えていて「気がついていないのだな」ということもありますから、いちいち目くじらを立てたりはしませんが……。
逆に、こちらが恐縮してしまうほど丁重に「ありがとうございます」と感謝の意を表す高齢者もいます。
ささいなことではありますが、これもハツラツ脳とヨボヨボ脳の違いかもしれません。
ハツラツ脳の人は周囲への観察力、周囲の人へ意思表示する能力を保持しています。
そして、喜怒哀楽といった感情表現にもメリハリがあります。
もちろん、怒りを制御できなくなるような感情表現は問題ですが、ハツラツ脳を維持するためには、状況に応じて周囲に自分の感情を表現することを心がけるべきです。
とくに周囲への謝意の表現は大切です。
脳の活性化には新しい情報を取り込むこと、すなわち情報の入力(インプット)が有効ですが、同時にそれを外部に表現する出力(アウトプット)が欠かせません。
・親切にしてもらったという情報の入力→謝意を言葉で伝える出力
これを繰り返すことで、脳の動きの停滞を防ぐことができます。
では、どうすればいいか。
じつに簡単です。
さまざまなシーンで「ありがとう」と発語する習慣を身につけることです。
この「ありがとう」という言葉のパワーは絶大で、ほとんどの場合、受け手に「快の感情」をもたらします。
この「快の感情」は円滑なコミュニケーションを行うためには欠かせないものです。
周囲を観察してみてください。
世代は問いませんが、とくに高齢者で「ありがとう」の言葉を頻繁に口にする人は、周囲の人たちから慕われていて、コミュニケーション(入力と出力)の量も多いはずです。
長年、高齢者専門の医療施設に勤務して、気がついたことがあります。
それは同じ入院患者はもちろんのこと、医者、看護師、病院従業員とお互いに上機嫌でコミュニケーションできる高齢者の特徴は、この「ありがとう」を頻繁に口にするということでした。
入院患者の中には「ありがとう」をほとんどいわない人もいました。
このタイプの人は、病院でのコミュニケーション量も乏しいためか、認知症の進行が速かったと記憶しています。
「ありがとう」をいおうと感じても、それを口に出すことをためらっていれば、ますますそれを口に出すことが億劫になってしまいます。
やがて、「ありがとう」が必要なシーンであることさえ感じなくなってしまいます。
これもヨボヨボ脳といっていいでしょう。
「感謝するに値するものがないのではない。感謝するに値するものを、気がつかないでいるのだ」
誰の言葉であったか失念してしまいましたが、こうならないために「ありがとう」を口グセにすることをおすすめします。
「ありがとう」の発語習慣の効用をナメてはいけません。
「いつまでもハツラツ脳の人 より」
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
最近、電車の中でキレる人を見かけます。
少し前までは、電車の中で暴れるのは酔っぱらいか、普段から暴力的な人と相場が決まっていました。
でも、最近は違ってきています。
しかも、普段はおとなしく、礼儀正しい人なのに、ついカッとしてキレてしまったという人がとても多いのです。
受けたストレスをコントロールすることができず、感情を爆発させ、普段では決してしないような行動をとってしまう、これがいわゆる「キレる」という状態です。
この「キレる」という行為、原因を簡単に言うと、「ストレス」です。
これはまさに「セロトニン神経」の機能低下が原因だと考えています。
セロトニンは脳に静かな覚醒をもたらします。
これは別の言い方をすれば「平常心」をもたらすということでもあります。
平常心を保つというのは、脳の切り換えがスムーズに行われ、どこも暴走も興奮もしていない状態のまま、スムーズに働いているということです。
セロトニン神経の機能が低下すると、感情や精神状態を普段の冷静な状態にキープすることが難しくなることは充分に推測できます。
そしてこのことは、キレる人が朝の満員電車よりも、夜の帰宅時に多いということからも証明されます。
イライラしやすいときは、脳の神経伝達物質であるセロトニン、アセチルコリン、ドーパミンなどが不足していることが考えられます。
そのため、これらの材料となるアミノ酸と、アミノ酸を取り込むために必要な糖分やビタミンB12の不足を疑ってみましょう。
脳を酷使するときには、たくさんのビタミンB群が消費されています。
B群は脳の働きに重要な役割を担っているのです。
神経の働きを整えたり、傷んだ神経を補修したり、タンパク質をドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質に作り替えるなど、「脳力向上」のためにもB群は欠かすことができないのです。
ビタミンB12について?