第3章 「ピークはまだ先」を死ぬまで忘れない
人生の節目節目に行われる同窓会。
歳を重ねるほど、同窓会の話題は、ほとんどは病気の話、年金の話、孫の話。
そして昔話。
話の流れ次第では、やがて「あのころに戻りたい」「あのころがピークだった」と懐古一色になってしまいがちです。
過度の「懐古好き」はヨボヨボ脳のひとつの症状です。
しかし、よく考えてみましょう。
超長寿時代にあっては、70代、80代でも、時間的な意味でのピークとはいえません。
「もうひと山、もうふた山あててみよう」
そう考えてみることです。
たしかに体力面での老化はあるものの、それを補って余りあるものがあります。
若い世代にはない経験、教養、雑学、人脈の蓄積です。
もちろん、老化現象として、新しい情報を記憶、記銘する能力は衰えます。
しかし、脳に蓄積されたさまざまな情報はもちろん、スピードこそ衰えはするものの、それを引き出す能力は、決してなくなってしまうわけではありません。
脳の仕組みで考えてみましょう。
「若い歌手の名前や歌は覚えられないが、半世紀前の売れっ子歌手の名前は忘れないし、ヒット曲も歌える」
70代、80代の人は、こういう経験をしばしばするはずです。
新しい情報は脳の海馬にいったん入力、保存されます。
そして、その情報の中で、印象深い情報、重要な情報は整理された後、大脳皮質に蓄積されます。
しかし、加齢によって、認知機能の劣化が生じます。
この老化現象は主に海馬の劣化によるものと考えられています。
これによって、70代、80代の人は新しい情報の記憶、つまり定着させる力が衰えるのです。
一方、大脳皮質のほうは、加齢の影響による劣化は限定的です。
ですから、「昨日はじめて会った人の名前は覚えていないが、30年前に2、3度会っただけでも、印象深い人の名前は覚えている」ということが起こるのです。
その結果、同級会、同窓会では、「誰もが記憶している古い情報=大脳皮質に蓄積された情報」が話の中心になるのです。
たしかに、かつての栄光の日々、めずらしい出来事、ときが過ぎれば笑える失敗談、失恋話などを話し合う場は愉快でしょう。
それに文句をいうつもりはありません。
しかし、同級生と別れた後の日々が所在ないものであったら、ちょっともったいない気がします。
熟成力で「もうひと山」に挑戦
「同友会は1時間で切り上げる」
文筆業兼出版プロデューサーの知人はこういいます。
現在87歳。
さすがに現役バリバリというわけにはいきませんが、会うたびに「何か面白いテーマはありませんか」と私に尋ねます。
「参加はするけど、すぐに退屈する。懐古は死んでから」
これが同級会を中座する理由。
1年ほど前、医者に軽いアルツハイマー型認知症と診断されましたが、意気消沈することはありませんでした。
「進行を抑える薬も飲んでいるし、治療薬ももうすぐできるそうじゃないですか」
息子さんが医者のせいか、認知症であっても、なにもできなくなるわけではないことを認識しています。
若い世代にはない経験も豊富で、教養、雑学の記憶はやや衰えたとはいえ、まだまだ健在。
指一本でとはいえ、パソコンのソフト「ワード」を巧みに駆使して文筆業と企画書作りを続けています。
かつてはプロデューサーとして、数々のミリオンセラーを世に出した人ですが、大脳皮質の状態は健康で、「もうひと山」というハツラツ脳を失っていないように見受けられます。
「ただ長生きしてるだけじゃ、面白くもなんともないだろ」
彼の口癖です。
「いつまでもハツラツ脳の人 より」
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寒暖の差、生活の変化が激しい毎日は、私たちの身体にも大きなストレスを与えます。
そんな日々が続くと、自律神経は、その変化に対応しきれなくなって、やがて疲れやめまい、不眠、頭痛といった症状が現れてきます。
とくに人間関係の変化は想像以上に心身への影響が大きい。
気分が落ち込んだり一時的にうつ状態になってしまうこともあります。
とはいえ、そのうちに治ってしまうことが多いので、うつ状態でも必ずしも病気とは言えません。
しかし、落ち込みの程度が重い時や、落ち込みが長引いてしまうと、人の意欲は奪われて行動にも影響を及ぼします。
私たちの脳の中で司令塔のような役割をしているセロトニン神経という神経細胞が弱ってきており、軽い不調からうつ病、パニック症候群、さまざまな依存症などを引き起こす原因になっています。
この現象は大人から子どもまで老若男女に広がっています。
セロトニン神経は、日を浴びることや意識した呼吸、簡単な運動をすることなど日常生活に少し工夫を加えることによって鍛えることができます。
脳には無数の神経細胞があり、その神経細胞の末端からセロトニンやアセチルコリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を放出しています。
それらによって次の細胞に情報を伝えていき、それが網の目のようにいっせいに行われることで、情報が瞬時に伝わり、手や足などの末端まで伝達されていきます。
しかし、その伝達情報がうまくいかないと、脳が興奮して抑制が効かなくなり、イライラしたり、落ち着かなくなったりします。
イライラしやすいときは、脳の神経伝達物質であるセロトニン、アセチルコリン、ドーパミンなどが不足していることが考えられます。
そのため、これらの材料となるアミノ酸と、アミノ酸を取り込むために必要な糖分やビタミンB12の不足を疑ってみましょう。
また、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が足りなかったり、神経伝達物質を放出するときに働くカルシウムが不足したりしているのも原因のひとつと考えられます。
ビタミンB12について?