アテローム血栓性梗塞

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アテローム血栓性梗塞
『高血圧、糖尿病、高脂血症、こうした病気を背景に比較的太い血管で起こります』

長い年月の間に動脈の内壁にコレステロールなどが付着し、かゆ状のコブのようなもの(粥腫 ジュクシュ)ができることがあります。
血管の内膜が厚くなり、内腔が狭くなるこのような変化をアテローム硬化(粥状硬化)と言います。
動脈硬化のほとんどはアテローム硬化です。
(注:動脈硬化には3種類あります。
太い動脈で起こるのがアテローム硬化。
頸部や手足の中ぐらいの太さの動脈に起こるのが中膜硬化で、血管の中膜にカルシウムがたまって、厚く硬くなります。
そして脳や腎臓などの細い動脈で起こるのが細小動脈硬化(ラクナ梗塞の原因になる)で、これは細い動脈が線維化します。いちばん問題になるのがアテローム硬化であることはいうまでもありません。)

狭くなった血管の血流は悪くなり、遂には滞った血液が血栓として固まり、血管を塞いでしまう、これがアテローム血栓性梗塞です。
従って、ほとんどの場合、アテローム硬化の原因となる高血圧、糖尿病、高脂血症などが、このタイプの梗塞の背景にあります。

比較的太い血管で起こりますが、どの血管が詰まるかで症状は異なります。簡単にまとめてみましょう。

● 内頸動脈が詰まる
症状は無症状から2~3日で死にいたるものまで、非常に異なるのが特徴です。大きな梗塞の場合は混迷・半昏睡などの意識障害に加えて、運動・感覚障害も起きます。左側の脳の場合は失語症の可能性もあります。
軽い場合は片側の手足の麻痺(片麻痺)などが生じろ、一過性脳虚血発作の場合もあります。

● 前大脳動脈が詰まる
前頭葉が侵されれば精神機能が障害される可能性があります。すなわち記憶喪失やうつ状態、時間や場所がわからなくなる、などです。

● 中大脳動脈が詰まる
この領域の梗塞は発生頻度が非常に高く、全体の70~80%を占めると言われています。片麻痺失語症、知覚障害などが現れます。

● 後大脳動脈が詰まる
この領域での梗塞の特徴は、どちらの目で見ても、同じ側の視野の半分が欠ける症状が多く見られることです。

● 椎骨・脳底動脈が詰まる
脳梗塞ではもっとも重要で、死にいたることもあります。前駆症状として目まいや意識障害を伴うこともありますが、突然発症することもあります。病気が大きいと、片麻痺は両側麻痺に移行し、ほとんどの場合、意識障害が出ます。

一般にアテローム血栓性梗塞は睡眠中や朝起きて間もない時間帯に発症することが多いとされていますが、これは血圧が下がり、血流が悪くなって血管が詰まりやすくなるためと考えられています。症状は数時間から数日にわたって段階的に進行します。

『症状の重い、軽いには場所以外にもさまざまな要素が絡んできます』
詰まる血管によって症状が異なることをざっとご紹介しましたが、たとえば同じ大脳動脈でも、場所によって症状が異なることは当然です。大ざっぱな分類として理解してください。

さらに言えば、脳梗塞は単純に血管が詰まるケースばかりではないのです。アテローム血栓性梗塞がもっとも起きやすいのは、下あごのあたりで頸動脈が内頸動脈(脳に行く)と外頸動脈(顔のほうに行く)に分かれる分岐点のあたりの内頸動脈です。道路でも交差点などが渋滞しやすいのと同じです。内頸動脈が詰まり始め、さて、今後どうなるかといえば、いくつかのケースが考えられます。
その場所が詰まると、これは大きな梗塞になります。
血栓が剥がれて、先へ流れていくと、剥がれた血塊は、先のもっと細い血管で詰まることになります。すぐに溶けてしまえば、症状は一時的で、これは一過性脳虚血発作となります。
非常にゆっくり詰まっていくと、側副血行路という、いわばバイパスができます。詰まっている部分を迂回してできた新たな血管を介して、血液が滞りなく運ばれるので、あまり症状は出ません。
(注:脳の血管には終動脈と言って、バイパスを作れない動脈があります。
通常、体のほかの動脈、たとえば手の動脈なら、1本が詰まっても、毛細血管がじわじわと伸びてほかの動脈と連絡し、やがてバイパスに成長します。
しかし、終動脈は他の動脈と連絡路を持っていません。まったく援軍の期待できない状態で自分の責任範囲に酸素や栄養を運んでいます。
脳梗塞のダメージの回復が難しいのはそのためです。
心臓の動脈も終動脈と考えられていましたが、脳ほどではなく、少しはバイパスを作ることがわかってきました。)

なぜのようなことが起こるのでしょうか。

動脈硬化は徐々にゆっくり進行します。その部分の血流がだんだん悪くなり、少ししか血液が来なくなると、何とか血液を確保しなければならないため、必要に迫られた体がバイパスを作るのです。
アテローム血栓性梗塞の場合は、バイパスを作る時間的な余裕があるということです。
極端な例では、頸動脈は詰まっているのに、バイパスができたおかげでピンピンしている人も中にはいて、偶然、ほかの検査などで頸動脈が詰まっているのが見つかることもあります。
「健康口座 脳梗塞 より」

脳梗塞の予防・対策
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