心原性脳塞栓症

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心原性脳塞栓症

『心臓にできた血栓が剥がれて脳の血管に流れ込み詰まらせます』
心臓など頭蓋外の動脈にできた血栓が剥がれ、その血塊が脳の動脈に流れ込み、血管を塞ぐ、これが脳塞栓です。
血管は先端に行くほど細くなりますから、溶けないかぎり、どこかで詰まってしまうのです。
源となるのは心臓がほとんどで、これを心原性脳塞栓症と言います。

これは、脳にしてみれば一種の奇襲攻撃ですから、ほとんどの場合突発的に発症し、症状も数秒から数分で頂点に達します。
長い年月をかけて徐々に進行してから発症するアテローム血栓性梗塞とは、この点が大きく異なります。

原因の大半は心臓疾患、特に心房細動という不整脈とされます。
これは心房の動きが異常になる病気で、心房の壁に血栓ができやすくなるのです。
脳塞栓は心原性がほとんどですが、まれに他の病気や外傷などで生じた脂肪や空気が詰まることもあります。

心臓の血栓から剥がれた血塊は、血流のいいところを流れ、脳の中の枝分かれする分岐点に達し、詰まることが多いのです。従って、比較的大きな梗塞になります。

症状は片麻痺と大脳皮質が障害された時に出る症状、つまり見えない、しゃべれない、言ってることがわからないなどを含むことが多く、軽症から重症までさまざまです。
ただ、症状の経過にはいくつかのケースがあり、これには血栓の性質が密接に関係しています。
脳の血管でできる血栓は、そんなに大きくはならないのですが、硬くて溶けにくいという性質があります。
これに対して心臓でできる血栓は、フィブリンというぶよぶよした寒天のような物質を主体とした血栓で、大きくなる代わりに溶けやすいという特徴があります。
溶けやすいということが、次に述べるような新たな問題を引き起こします。

『心原性脳塞栓症で注意しなければならないのは出血性梗塞です』
心臓でできた血栓は、脳の血管でできた血栓に比べ溶けやすいと書きました。そのため、もし詰まっていも早い段階で溶ければ、症状がみるみる目改善することもあり得ます。
少ないですが、実際にそういう患者さんもいます。

ところが、逆に発症後1~3日して、症状が急に悪くなる患者さんもいます。
調べてみると梗塞巣に出血が見られるのです。これを出血性梗塞といい、全脳塞栓の6割に見られるとされています。

出血性梗塞は次のように説明できます。
脳塞栓で血管が詰まると、血管壁にも血液が供給されないため、血管自体が弱くなります。
もし血栓が溶けて、血流が再開されると、血管に圧力がかかり、弱った血管がそれに耐えられず、血液が滲み出すように出血するのです。
滲むような出血ではなく、大きな血液の塊を作るような出血性梗塞の予後は、通常の脳梗塞に比べてよくありません。

安静中に起こりやすい脳血栓とは違って、心原性脳塞栓症は熱いお風呂に入ったり、急に運動したりするときに起こりやすいと言われています。
心房細動が始まったり、正常に戻るときに、血栓が剥がれやすくなるためと考えられています。

『脳血栓(A)と脳塞栓(B)の主な違い』
● 背景にある病気
A:高血圧、糖尿病、高脂血症
B:心臓病(心房細動など)
● 一過性脳虚血発の前ぶれはあるか
A:しばしばある
B:まれにしかない
● なりやすい人
A:60歳以上
B:若い人でもなることがある
● どんなときになるか
A:安静時
B:急に動いたり、熱いお風呂に入ったときなど
● 症状の経過
A:段階的
B:一挙に頂点に達する
● 治療
A:抗血栓療法(血栓溶解療法、抗凝固療法、抗血小板療法)と脳浮腫軽減療法が中心
B:抗血栓療法は使えない
「健康口座 脳梗塞 より」

脳梗塞の予防・対策
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