昔の楽しかった思い出をつづったり、話したりするのは脳によい

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昔の楽しかった思い出をつづったり、話したりするのは脳によい
 
「ナン・スタディ」の自伝の研究では、他にも興味深いことがわかりました。
シスターたちが自伝を書いたのは20代前半頃です。
そのときの文章力の違いが、高齢になったときの認知症の発症と関係しているというのです。
※ちなみにナンは修道女のことで、「ナン・スタディ」とは米国ケンタッキー大学のデヴィット・スノウドン博士によって1986年にはじめられた疫学研究です。ノートルダム教育修道女会の協力を得て、75歳から106歳までの修道女678名を対象に、年1回の身体検査と認知力検査を行い、シスターたちの同意を得た上で死後に脳を解剖させてもらうというもの。現在も研究が続けられている息の長いプロジェクトなのですが、脳の老化を多角的に研究することを目的とし、アルツハイマー病の解明に大きな成果をもたらした非常に画期的なものです。
若いときに語彙をたくさん用いて内容豊かな自伝をつづっていたシスターと、簡潔なレポートのような自伝を書いていたシスターとでは認知能力の衰えに差があり、語彙も内容も豊かな自伝を書いていたシスターほど高齢になっても認知症と無縁でした。
文章を書くというのは、知的作業の中でもかなり脳を使います。
創造力も必要とされますから、より豊かな文章を書けば書くほど、脳の広い領域を総動員することになるのです。
手を使って書けば、それこそフル活動です。
漢字を確かめたり、言葉を調べたりするために辞書を引く、文章を頭の中で組み立てる、こうした作業は脳を刺激してくれます。
手紙を書いたり、日記を書いたりすることは脳を大いに活性化させてくれるのです。
いまはパソコンの普及で手書きが減ってしまいましたが、脳を刺激する意味からも手で書く機会も増やしてみてもよいでしょう。
また、昔のできごとを思い出しながら書く作業は、海馬を働かせることにもなります。
脳の健康を保つということは、海馬の働きを鈍らせないことでもあるのです。
そういう意味で日記はオススメです。
とくに交換日記は、個人日記以上に頭を使いますし、楽しいものです。
思い出やできごとを相手に伝えるために文章を練ることが求められますし、そのためには客観性も大事です。
そのぶん、より高度な働きが必要とされるからです。
認知機能に衰えが出始めた高齢の親御さんと交換日記をすることで、認知機能を改善させた方もいます。
親御さんが年を取ってきたら、子どもからの働きかけも健康のために必要であると思います。
 
昔を振り返るのは、後ろ向きではない
 
自分史を書くのもいいですね。
自分の人生を客観的に振り返りながら、思い出してまとめていく作業は海馬を大いに刺激してくれます。
ついでに、将来の目標や夢を、自分史に書き足してしまってもよいのです。
これまでの人生を振り返ることは、この先の人生をどのようにすごしたいかまで考えることにもなり、生きがいや新たな目標をもつことにもつながるでしょう。
生きがいや目標をもつことは主観的幸福感を高める最良の方法です。
過去を振り返っていくと、中にはイヤな思い出が出てくるかもしれません。
でも人間には防衛本能があり、思い出の多くは楽しかった、うれしかったなどプラスのほうに美化されているものです。
楽しかったできごとを思い出すと、記憶を司る領域である海馬の働きが活発になります。
そもそも「思い出す」は、頭の中に保存されている情報を引き出すことですから、過去にどんなことがあったかを振り返ると、それだけで海馬をたくさん使うことになります。
そこに楽しかった、うれしかったなどのプラス感情が伴っていると、海馬がますます張り切って働いてくれるようになるのです。
昔を振り返ることは決して後ろ向きなことではなく、脳によいのです。
昔を振り返りながらも、前に進めばよいのではないでしょうか。
認知症の方に、昔のアルバムを見せながら思い出話をしたり、楽しかったときのことを話題に話をしたりすると、記憶力や認知機能が戻ってくることがあります。
「書く」と「思い出す」の二つができる日記や自分史は、脳の力を取り戻す組み合わせといってよいのです。
「らくらく認知症予防法 生涯健康脳になるコツを教えます! より」
 
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脳の中では、運動会のリレーのように、神経がバトンをつないで、指令を伝達していきます。
しかし、たとえばC地点の神経細胞が倒れてしまい、指令がそこで止まってしまう、という事態が起こります。
このとき、すぐにC地点の神経細胞を救出できれば復活したのですが、時間が経ち、死んでしまって、その指令も届かなくなる。
これが運動麻痺や言語障害の起こる理由です。
ところが、脳のすごいところは、C地点から今度はほかのルートでバトンを渡そうとするのです。
新たなルートで、新たなリレーのチームを作り、「言葉を話す」という指令を伝えようとします。
この新チームは、以前のチームのようにバトンの受け渡しがうまくなく、スムーズに指令が届きません。
しかし、何度も繰り返し練習するうちに、だんだんうまく指令が伝わるようになっていきます。
このようにして、死んでしまった神経細胞は復元しないけれど、ほかのルートで代用できれば、言葉がある程度話せるようになり、失語症もよくなっていくというわけです。
 
ニューロン同士が情報伝達を行うこと、つまり神経機能的連絡を行うためには、新経路の交差点ともいうべきものが必要であり、この交差点をシナプスと言います。
このシナプスは、歳をとっても増加し、より成熟した結合が進行するとされています。
高度の創造過程にも高密度のシナプス形成が必要と思われ、そのためには、それに必要な素材として神経系構成成分、つまり栄養成分が必要なことは当然で、また、その構築作業のための酵素、そしてそれを補佐する補酵素的ビタミンも必要となります。
その中でも重要なものがビタミンB12なのです。
 
老人の認知症3割~5割を占めるアルツハイマー病の場合は、脳細胞が萎縮する病気です。
この萎縮を食い止めるためには、脳細胞を生成するためのタンパク合成、核酸(DNA)合成が順調に行われる必要があるのです。
ビタミンB12は、脳細胞のタンパクと核酸(DNA)の生合成を司っています。
新しい核酸、タンパク質が生まれ、それによって細胞も新しく生まれ変わり、「こわれた組織、細胞」と「新生の組織、細胞」が入れ替わります。
その結果若さにもつながると考えられます。
アルツハイマー認知症の方々の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
 
ビタミンB12について?
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