言葉で認知を変えていく「認知療法」
うつ病は「悪循環を生みやすい病気」という特徴があります。
「心配が心配事を増やす」ように、悪循環となる考えが「自己増殖」していくタイプの病気といえます。
かつては、
「うつ病のときには、悲観的な認知となり、うつ病が原因で悲観的な認知が起こっているのだから、その悲観的をいくら変えても、原因であるうつ病が治療されなければ効果はない」
と考えられていました。
うつ病治療においては、「言葉による説得は効果がない」ということが治療の常識とされていたのです。
その精神科治療の従来の常識に対して、1963年に米ペンシルベニア大学精神科のアーロン・ベック教授は、新たに「認知療法」を開発しました。
うつ病は「感情の病気」なので、「感情に対して論理的な説得をしても無意味だ」というのがうつ病の専門家の見解でしたが、ベック教授は、患者に対して「説得」を試みることで、うつ病改善に大きな効果が得られることを示したのです。
たとえば、実際には裕福なのに、「このままでは私は生活できなくなって、野たれ死にしてしまう」という悲観的な認知をしている患者さんがいたら、「認知療法」では次のようなやり取りをします。
治療者 「あなたにはいくらくらいの貯金がありますか」
患者 「1億円くらいあります。でもこんな貯金は、数年でなくなりますよ」
治療者 「今、毎日、どのくらい使っていますか」
患者 「1日、1000円程度で暮らしています。節約しないと、どんどんお金が減りますから」
治療者 1日1000円使うとすると、1億円あれば。10万日暮らせますよ。10万日というと、約270年分ですね」
このようなやり取りで、患者さんに、
「そうか、270年分もお金があれば、心配しなくても私は生きていけるのではないか」
という気づきが生まれれば、患者さんの悲観的な「抑うつ気分」が少しは和らぎます。
ベックの当時の治療法は、悲観的な認知に「根拠がない」ということを示して説得する方法です。
悲観的な認知が減ることで、悲観的な感情も収まっていくわけです。
ベックは、説得によって悲観的認知という「症状」に働きかけ、「原因」となっているうつ病を改善できるということを発見したのです。
今思うと当たり前のような話ですが、「認知を変えても、うつ病は治らない」とされていた当時としては画期的な発見でした。
「「脳が老化」する前に知っておきたいこと より」
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認知症の多くは、脳血管障害の積み重ねで起こり、その原因のほとんどが脳梗塞です。
ですから、脳梗塞の前兆である隠れ脳梗塞を早期発見することで多くの認知症を防ぐことができるのです。
脳梗塞は、高血圧や糖尿病などの病気が原因となったり、生活習慣などによって血液がドロドロになって血液循環が悪くなったりして、血管が厚く狭くなり、脳の血管が徐々に詰まって進行していきます。一般的に、脳梗塞の初期には、大きさ数ミリ程度の微小な梗塞が数個出現し、段階をへるごとにこの梗塞が脳のあちこちに見られます。このような症状のないごく小さな梗塞が隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)です。
「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、早い人だと30代からあらわれ、40代を過ぎると急に増加するといわれています。
脳梗塞をはじめとする脳血管障害を生活習慣病の一つととらえ、ふだんから健康に保つ生活を心がけましょう。
動脈硬化は年齢とともに発症しやすくなり、50代になるとほとんどの人(女性は60代から)に動脈硬化が見られるようになります。
ビタミンB12や葉酸の吸収が悪くなると、ホモシステインという老化物質が増え、動脈硬化を生じることがわかっています。
ビタミンB12は、脳からの指令を伝達する神経を、正常に働かせるために必要な栄養素です。
十分にあると、集中力ややる気が高まり、不足すると、神経過敏などの症状が起こりやすくなります。
また、脳や神経と関連が深く、不眠症にも効果があるといわれています。
ビタミンB12は、悪性貧血のみならず神経や免疫系にも効果があることが明らかになり、高齢者のうつや認知症の予防等に利用されています。
高齢者が理由のはっきりしない神経症状を呈したら、ビタミンB12の欠乏を考えるべきだという学者もいます。
ビタミンB12について?
https://www.endokoro.com/libra/vitamin01.html
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