体を動かすのではなく、活動レベルを変える働き
セロトニン神経が「ストレスフリーな脳」をつくる理由を、脳科学的に説明していきましょう。あるのは、
セロトニン神経には、ことばを話したり、ものを見たり、体を動かしたりといった、直接肉体を動かす機能はありません。
その代わりに、心や体の活動レベルそのものをコントロールしています。
したがって、セロトニン神経がきちんと働かないと、私たちの心と体はバランスある働きや動きができなくなってしまうのです。
セロトニン神経の働きを大きく分けると、次の5つにまとめることができます。
とくにはじめの3つが「ストレスフリーな脳」をつくり出すことに深く関係しています。
1.すっきり爽快な意識をつくり出す
2.平常心を維持する
3.交感神経を適度に興奮させる
4.痛みを軽減させる
5.よい姿勢を維持する
1は、私たちが心地よい人間生活を送るうえでの基本です。
大脳皮質の活動を適度に調節しながら、その働きを高いレベルで維持するという、人間の脳にとって理想的な覚醒状態をもたらします。
2は、「ストレスフリーな脳」をつくる中心となる働きといってよいでしょう。
私たちの心が内外の影響を受けて大きく変化するのは当然ですが、それが極端になると日常生活にも支障をきたしてしまいます。
セロトニン神経は、そうした感情の振れ幅が大きくなりすぎないようにする機能を持っているのです。
3は、自律神経をコントロールする働きです。
これも「ストレスフリーな脳」には欠かせません。
自律神経は交感神経と副交感神経という2つの神経からなっており、お互いがバランスをとりながら、脈拍、血圧、呼吸などをコントロールしています。
このうち、起きているときに優位になるのが交感神経で、心や体を緊張、興奮状態に導きます。
セロトニン神経は、目覚めたあとの活動がスムーズになるよう、交感神経を適度に刺激するのです。
4は、痛みによる神経の伝達を抑制する働きです。
痛みに対してもつらさを感じなくなるため、気分を落ち着かせるという意味においては「ストレスフリーな脳」とも関連してきます。
5は、姿勢を維持するのに重要な、首の筋肉や背骨まわりを支える筋肉、下肢の筋肉、表情をつくる筋肉に適度の緊張を与える働きです。
「脳科学者が教える「ストレスフリー」な脳の習慣 より」
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寒暖の差、生活の変化が激しい毎日は、私たちの身体にも大きなストレスを与えます。
そんな日々が続くと、自律神経は、その変化に対応しきれなくなって、やがて疲れやめまい、不眠、頭痛といった症状が現れてきます。
とくに人間関係の変化は想像以上に心身への影響が大きい。
気分が落ち込んだり一時的にうつ状態になってしまうこともあります。
とはいえ、そのうちに治ってしまうことが多いので、うつ状態でも必ずしも病気とは言えません。
しかし、落ち込みの程度が重い時や、落ち込みが長引いてしまうと、人の意欲は奪われて行動にも影響を及ぼします。
私たちの脳の中で司令塔のような役割をしているセロトニン神経という神経細胞が弱ってきており、軽い不調からうつ病、パニック症候群、さまざまな依存症などを引き起こす原因になっています。
この現象は大人から子どもまで老若男女に広がっています。
セロトニン神経は、日を浴びることや意識した呼吸、簡単な運動をすることなど日常生活に少し工夫を加えることによって鍛えることができます。
脳には無数の神経細胞があり、その神経細胞の末端からセロトニンやアセチルコリン、ドーパミンなどの神経伝達物質を放出しています。
それらによって次の細胞に情報を伝えていき、それが網の目のようにいっせいに行われることで、情報が瞬時に伝わり、手や足などの末端まで伝達されていきます。
しかし、その伝達情報がうまくいかないと、脳が興奮して抑制が効かなくなり、イライラしたり、落ち着かなくなったりします。
イライラしやすいときは、脳の神経伝達物質であるセロトニン、アセチルコリン、ドーパミンなどが不足していることが考えられます。
そのため、これらの材料となるアミノ酸と、アミノ酸を取り込むために必要な糖分やビタミンB12の不足を疑ってみましょう。
また、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖が足りなかったり、神経伝達物質を放出するときに働くカルシウムが不足したりしているのも原因のひとつと考えられます。
ビタミンB12について?