第1章 脳トレは「継続できるかどうか」がポイント
第1章 脳トレは「継続できるかどうか」がポイント
身体を動かすばかりが、運動ではありません。
脳を鍛える「脳トレ」という言葉があります。
脳トレという言葉がなかった時代には、「頭の体操」といったものです。
体操をしたり立ち上がって歩き回ったりすると、脳の血流が促進されるように、脳を使って「頭の体操」をすると、脳の血流が促されるようになります。
必要に迫られて、脳を流れる血液の量が増えてくるのです。
「脳トレ」は、東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長などの発信により、2004年頃に一大ブームを巻き起こしました。
川島先生は、単純な「読み」「書き」「計算」などの継続的な反復学習により、脳を活性化させる学習療法を提唱しています。
その研究の手法や脳トレの具体的なメソッドには批判もあるようですが、大筋で川島先生の提案は間違っていないと思っています。
名作の音読、写経、暗算……。
脳トレには、いろいろな方法があります。
どれを選んでもいいのですが、いずれにしても「続けられるかどうか」がポイントです。
「脳活性は一日にしてならず」なのです。
脳を刺激して血液量を増やせたとしても、それが三日坊主に終わってしまったら、効果は一時的なものにとどまってしまいます。
仮に、脳の血液量をどっと増やす方法を週1回だけ続けた人と、脳の血液量を少しだけ増やす方法を毎日続けた人を比べると、どちらが認知症を予防する効果が高いでしょうか?
そうした研究はまだないようですが、個人的な見解を書かせてもらうと、後者の方が有利だと思っています。
血液量をアップさせる効果はほどほどだとしても、日々の生活で継続すれば、脳トレの効果は高まると考えられるからです。
好きで続けられるなら、数独、クロスワードパズル、ジグソーパズル、塗り絵など、なんでも効果的。
囲碁や将棋、麻雀といったボードゲーム&テーブルゲームもいいですね。
スマホや家庭用ゲーム機のゲームで遊ぶのもいいでしょう。
何が続けられるかには、性格やライフスタイルなどによって個人差が大きいものです。
計算や数字が好きな人なら、暗算ドリルや数独などが続けやすいでしょうし、文字を書くのが好きなら写経をしたり、新聞のコラムを書き写したりするほうが続けやすいでしよう。
日々の食事や行動、考えたことなどを日記に書き綴るのもいいですし、オリジナルの小説やエッセイにチャレンジするのもいいと思います。
クイズが好きならクロスワードパズルもいいでしょうし、同好の士がいるならボードゲームやテーブルゲームが続けやすいでしょう。
好敵手と勝ち負けを競っていると、脳がフル回転して血流も活発になるはずです(勝ち負けにこだわりすぎてストレスが増えると、認知症のリスクになりますから、のめり込みすぎない程度に楽しむことも大切です)。
何が続けやすいかは十人十色で、万人にフィットする脳トレは存在しません。
何が自分に合うかは、やってみなければわかりませんから、いろいろと試してみて、「面白い、これなら続けられそうだ!」というものを見つけましょう。
そうして試行錯誤すること自体も、認知症予防に有効です。
※ポイント 自分が好きな「脳トレ」の手段を無理せず楽しみながら続けましょう
「一生ボケない習慣 より」
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物忘れとは、脳は、体の機能全般をコントロールしている司令塔ですが、加齢とともにその働きは衰え物忘れの症状が出てきます。
脳血管の動脈硬化を放っておくと、血液循環が悪くなって脳細胞の動きが低下し、記憶力や思考力などが鈍り物忘れがはじまります。
40歳を越えた頃から「ど忘れや物忘れが激しくなった」「人の名前がなかなか思い出せなくなった」などと物忘れを感じるようになるのは、脳機能低下のあらわれです。
脳の神経細胞は約140億個といわれ、25歳を過ぎると1日に10~20万個ずつ死滅していきます。
死滅した神経細胞は再生されず物忘れもひどくなります。
しかし、死滅した神経細胞は元に戻らなくとも、神経の通り、すなわちネットワークをよくすれば、低下した機能を補い、さらには高めることができ物忘れも改善されます。
物忘れに関する神経伝達物質の中で記憶と学習にかかわっているのはアセチルコリンで、このアセチルコリンはコリンと酵素を原料にしてつくられています。
アセチルコリンの合成にはコリン、ビタミンB1、ビタミンB12などがかかわっています。
同時にこれらの栄養をとることが、アセチルコリンを増やすことにつながるわけです。
通常、コリンはレシチン(フォスファチジルコリン)のかたちで、食材から摂取されます。
レシチンはアセチルコリンの材料になるだけではなく、細胞膜の材料にもなっています。
とくに脳の神経細胞の細胞膜にはたくさん含まれていて、多彩な働きをしています。
血液にのって運ばれる栄養の細胞内へのとり込みや細胞内の老廃物の排出、神経伝達物質の放出や情報ネットワークの形成といった、脳の機能全体に深くかかわっています。
これが、レシチンが「脳の栄養素」と呼ばれるゆえんです。
そのレシチンを多く含んでいる食品の代表が卵黄です。
なお、レシチンをアセチルコリンに合成するには、ビタミンB群が欠かせないため、同時にとることが望ましいのです。
アルツハイマー型認知症の患者の脳脊髄中にはビタミンB12が少ないことが確認されています。
ビタミンB12は、主に動物性食品にしか含まれないというビタミンなので、野菜中心の食生活の人や、ダイエットをしているなど食事の量が少ない人は、ビタミンB12を補った方が良いとされています。
加齢、胃の病気、ストレスなどでも不足します。
さらに、ビタミンB12や葉酸をはじめとするビタミンB群は、ミネラル、アミノ酸などの栄養素と協力し合っているため一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。
ビタミンB12について?