ウォーキングより筋トレをしよう
日々の診察で、運動習慣について尋ねると、「ウォーキングをしています」と答える方がいます。
もちろん、全くやらないよりは、やった方がよいです。
しかし、ウォーキングだけでは、高齢の方が陥りやすい、下肢の筋力減少を避けることができません。
20歳から80歳に到るまで、下肢の筋力は30%も減少します。
運動だけでなく、食事からタンパク質をとることも、もちろん大事です。
伝統的な日本食は健康といわれていますが、タンパク質の量は1.5~2倍にする必要があると考えます。
高齢の方でも筋力は増えます。
むしろ、下肢の筋力は健康寿命に関係するので、高齢の方ほど運動をした方がよいのです。
ただし、筋肉トレーニングやHIITなど、少し激しい運動が必要です。
「激しい」とはどの程度なのでしょうか?
最大筋力の20%以下の運動では、筋力は低下してしまいます。
ウォーキングなどがそうです。
人にもよるかと思いますが、階段を登るくらいでは、最大筋力の15%ほどしか使えないようです。
最大筋力の20~30%の場合でも、筋力は増加も低下もしないようなのです。
筋力を増加させるためには、最大筋力の40%以上の負荷が必要です。
最大筋力は、1回で持ち上げられる最大の重さや、決まった重さを持ち上げられる回数などのよって測ることができます。
無理に行うと危険なので、測るときは専門家に相談しましょう。
先日、80代後半で非常に若々しい患者さんがいたので、「何か運動をしていますか?」と聞いたら、社交ダンスをやっているとのことでした。
社交ダンスも本格的にやるとかなりの筋力を使うでしょう。
姿勢もピンとしていました。
社交ダンスはかなり技術が必要になるでしょうが、HIITならあまり難しくありません。
エルゴメーター(スポーツジムにある自転車)を使うと簡単にできますし、スクワットなどであれば、特別な道具はいりません。
水泳でHIIT行うとしたら、25メートルダッシュを8本ほどでしょう。
トレッドミル(スポーツジムにあるルームランナー)でもよいですが、スピードを上げるのに時間がかかります。
ただ、短い期間で得た筋肉は、トレーニングをやめるとすぐに衰えてしまいます。
しかし、長期間のトレーニングで得た筋肉は、すぐにはなくなりません。
一時的に無理をするのではなく、持続可能な方法でトレーニングを継続することが大切です。
きつめのトレーニングを続けるには、仲間の支えが必要かもしれません。
パーソナルトレーナーに指導してもらうという方法もあります。
しかし、仲間を作って趣味で運動する方が、周りの人が痩せたり、お腹周りが減ったり、大きく変化するのが見えるでしょう。
すると、「自分も頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。
※「HIIT(高強度インターバルトレーニング)
比較的高強度の運動と、低強度の運動(もしくは休憩)を短時間で繰り返すトレーニング方法です。
例えば、スクワットを高速かつ全力で短時間(20~30秒)行い、短時間の休憩(10~30秒)を挟んで、再び同じようにスクワットなどをするということを数セット行います。
HIITは短時間で、有酸素運動と筋力トレーニングの両方の効果が得られます。
さらに、中強度の持続的な有酸素運動よりも、体脂肪を減らすことができるのです。
HIITに大変詳しい、東海大学の川田浩志先生によると、全力の7~8割の強度でも十分とのことでした。
※足腰が痛んで激しい運動ができない人には「Isometric Resistance Training(等尺性収縮運動)」
「力を込めて動かない」運動です。
代表的なものは、「アイソメトリックハンドグリップトレーニング」です。
テニスボールなどの小さなボールを片手に持って、最大筋力の3分の1くらいの力で2分間握り、反対の手でも行います。
これを数回繰り返すのです。
握ったり離したりするのではなく、2分間握りっぱなしです。
ハンドグリップを使ってもよいでしょう。
単純な動きですが、この運動を週に2~3回行うだけで10くらい血圧が下がるというデータがあるのです。
ぜひ、食事と一緒に実践してください。
ただし、かなり血圧の高い人(上が180、下が110を超える)がむやみに運動するのは危険ですので、必ず医師の相談のもとに行いましょう。
「『血流』をよくする 最高の習慣 より」
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+
血管力を高める食事は、炭水化物(糖)、塩分を少なめに、HDLコレステロール値を上げる食材を選ぶのが基本です。
これに外せないものが、たんぱく質を十分に摂る食事を心がけることです。
血管はアミノ酸、たんぱく質とコレステロールなどの脂質によってつくられます。
アミノ酸は普通の食事をしていれば十分にとれるので、動物性たんぱく質を意識しましょう。
たんぱく質はとくに血管中膜の結合を強くします。
動脈壁そのものを強くするので、脳出血などを防ぎます。
各栄養素にはそれぞれ役割があり、互いに作用し合って初めて「栄養」として働きます。
多種類の栄養素が機能を発揮し、効率よく利用されるしくみがヒトの体には整っています。
たとえば、糖質がエネルギーに変わるにはビタミンB群などが必要で、ビタミンB群が活性化するには各種のアミノ酸やミネラルが必要、…というように、栄養素を利用するにはほかの栄養素の働きが不可欠です。
よく、ヒトは1人では生きられないといいますが、栄養素もひとつだけでは機能しません。
ビタミンB群とは、体に入った栄養成分をエネルギーに変えるときに不可欠なビタミンの仲間です。
8種類すべてが互いに協力しあって体のエネルギーを生み出す働きに関わっているため、一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。
また、B群は、体内で起こっている「酸化」の抑制にも間接的に関わっています。
B群は体中の細胞の正常な代謝活動を助ける「補酵素」として、欠かせない存在なのです。
ビタミンB12と葉酸、ビタミンB6の吸収が悪くなると動脈硬化の原因物質 (ホモシステイン・活性酸素)が増えるといわれています。
ビタミンB12について?
https://www.endokoro.com/libra/vitamin01.html
※ちょっと使える身近な情報をお届けしています!