血液が薄いと、脳が栄養不足になる
血液が薄いと、脳が栄養不足になる
これまでにさまざまな診療科の患者さんを見てきましたが、血糖調節障害(血液内の血糖値を調節する機能が正常に働かない症状のこと)、精神疾患をかかえる患者さんは、ほかの科に比べて偏食の人が圧倒的に多いです。
とくに、肉をまったく食べない、魚をまったく食べない、野菜はすべて食べないといった、極端な偏食が目立ちます。
バランスの良い食事は、健康な身体と心を作りますから、管理栄養士としては、栄養価を計算した理想的な食事を食べて元気になってもらいたいところです。
病院のサービスとしては、好き嫌いに合わせて入院食を出せば、評判は上るでしょうが、好き嫌いに対応してしまうと栄養バランスは崩れたままで、症状は一向に良くなりません。
そのため、好き嫌いがあっても、栄養バランスのとれた食事を出すようにしていますが、
「症状を改善するためには、全部食べなくてはいけませんよ」
とお伝えしても、なかなか食べてもらえません。
精神状態が不安定だから食べ物にもこだわりがある、という見方もありますが、それよりも長年の偏食によって栄養不足が深刻化し、脳細胞や脳内神経伝達物質がうまく作られない状態がずっと続いていたために、精神疾患が起こっていると考えています。
血糖調節障害や精神疾患を抱える患者さんは、偏食のなかでも、とくに野菜嫌いが多い印象です。
野菜にはミネラルと食物繊維が豊富に含まれています。
たとえば、血糖値を下げる役割を果たす「インスリン」というホルモンは、ミネラルのひとつであるカリウムが原料になっています。
野菜が嫌いだとカリウムが不足して、インスリンが作られる量が減ってしまいます。
私は、血液検査のカリウム値から、インスリンの分泌量を推測しています。
ほかにも、ホルモンの分泌には、ミネラルや食物繊維の力が不可欠。
野菜嫌いを続ければ、ホルモンを作ることができなくなります。
ホルモンは、感情を左右する働きもありますから、ホルモンがうまく作れなければ、精神状態も不安定になってしまいます。
また、ミネラルのひとつである鉄分は血液の主成分であり、血液濃度に深く関わっています。
そのうえ、脳内神経伝達物質の「ドーパミン」や「セロトニン」の材料としても欠かせない栄養素です。
栄養素は、血液と一緒に身体の各器官に運ばれていきます。
血液の濃度が薄くなると、栄養を運ぶ機能が衰えてしまい、必要な栄養素が脳や身体に届かなくなります。
脳に栄養が届かないと、脳内神経伝達物質がきちんと作られませんから、イライラ感や不安感を引き起こしやすくなります。
女性が、月経の周期によって気分に波が起こりやすいのは、ホルモンのバランスだけではなく、月経によって血液が失われるために起こる、血液の濃度も関係しているんです。
女性のイライラ、カリカリ、ヒステリー、不安、優柔不断の多くは、「潜在性鉄欠乏貧血」が原因になっています。
潜在性鉄欠乏貧血とは、貯蔵鉄の量が少ないことです。
これは、一般的な血液検査では見つからないので、本人も気づいていない場合が大半です。
男性でも、偏食、過多な飲酒、過多な運動などで起こります。
鉄分はタンパク質と一緒に働く性質があり、タンパク質と一緒に摂ると吸収率がアップします。
ほかにも、ミネラルの銅、亜鉛、セレン、マンガン、ビタミンCも一緒に摂ることで鉄分の吸収率が上ります。
鉄分は単体では吸収率が悪いので、これらの栄養素と一緒に摂る必要があります。
鉄分と、鉄分の吸収率をアップさせる栄養素が含んでいるのが、赤身の肉。
肉は、貧血予防に最適な食べ物なんです。
ダイエットや菜食主義で肉を控える人がいますが、肉を食べないと鉄分をはじめ、さまざまな栄養素が不足しますから、人格形成と脳にとって、とっても危険!
特定の栄養素を排除したダイエットは、必ず脳に影響が出ます。
以前、原因不明の恐怖心に襲われて救急車で病院に運ばれてきた若い女性がいました。
彼女の血液検査値を見ると、ダイエットのせいで栄養状態がとても低下していました。
突然の恐怖心は、栄養不足で脳に栄養が行き渡らなくなったために起こった現象でしょう。
○○制限や、特定の食べ物を禁止するダイエットは、栄養が著しく偏り、思考まで偏ります。
本人は気づいていなくても、「以前より神経質になった」「考えが偏っていて頑固」など、周りの人から厄介者に思われるケースが多いです。
これらは、栄養不足が原因である可能性が高いのです。
脳血流の優先順位。
栄養不足や低血糖、低酸素状態になると、理性と感情のコントロールがつかなくなり、暴言、暴行、過食など精神症状が起こる。
「栄養で人生は変わる より」
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イタリアで、子供に完全菜食を強いる親に対し、禁固刑の罰則を与えるという変わった法案が議会に提出されました。
肉や魚を食べない人を菜食主義者の「ベジタリアン」と呼ぶのに対し、肉や魚だけでなく、卵、バター、はちみつなど、動物搾取による製品も食さない人を完全菜食主義者の「ビーガン」と呼んでいます。
つまり、イタリアでは、子供に肉、魚、卵などを与えないビーガンの親は、法律で罰せられるべきという議論が持ち上がっているのです。
なぜ、このような法が提案されるに至ったのでしょうか。
イタリアでは、ビーガンが人間にとって、著しく健康に良いという考えが普及した結果、動物性の食物をすべて取り除いた食事を子供たちに強要する傾向が見られるのです。
このブームが影響し、ここ最近では、乳幼児や2歳の子供たちが栄養失調で病院に運ばれ、時には、危篤状態に陥る事態などが発生。
幼少時に必要なプロテイン、ビタミンD、B12、カルシウム、オメガ3、鉄分などがビーガンには足りないという問題が危惧されているのです。
確かにお肉を食べなければ、ベジタリアンですが、ただそれだけでは、健康的なベジタリアンとは呼べません。
お肉には、私達の体が必要とする必須アミノ酸がバランスよく豊富に含まれています。
それに匹敵するほど効率よく必須アミノ酸を私達の体に提供できる野菜はありませんから、お肉を食べずに体を健康的に保つには、それなりの方法を知らなくてはなりません。
また、ビタミンB12を含む穀類、イモ類、野菜、果物、種実はありませんから、ビタミンB12の欠乏症に陥るベジタリアン/ビーガンが多いのが現状です。
動物性食品以外では、発酵食品、海苔に含まれているのみです。
これだけは必ずしっかり毎日の食事に加えるようにしましょう。
ビタミンB12は、胃の粘膜から分泌される内因子という糖タンパクと結合し、腸で吸収されます。
そのため胃の病気や高齢で吸収が悪くなっている人などの場合は吸収されにくくなるので、欠乏症状が現われやすくなります。
加齢、胃の病気、ストレスなどでも不足します。
ビタミンB12は細胞の生成にとって重要な、核酸とたんぱく質の合成に関わっているため、健康維持に無くてはならない栄養素なのです。
新しい核酸、タンパク質が生まれ、それによって細胞も新しく生まれ変わり、「こわれた組織、細胞」と「新生の組織、細胞」が入れ替わります。
その結果若さにもつながることにもなります。
ビタミンB12について?
http://www.endokoro.com/libra/vitamin01.html
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