第3章 寝る子は育つ、寝る高齢者は認知症になりにくい

第3章 寝る子は育つ、寝る高齢者は認知症になりにくい

 

昔から「寝る子は育つ」といわれます。

寝ている間に分泌される「成長ホルモン」が、子どもの成長を助けてくれるからです。

 

質の高い眠りが求められるのは、子どもだけではありません。

大人も日中アクティブに動き回ったら、夕方以降は休息して夜ぐっすり眠り、日中の疲れをとるというのが理想的なサイクルです。

 

 

眠りは認知症とも関わっています

なかでもアルツハイマー認知症は、睡眠不足で発症リスクが上がることがわかっています

 

アルツハイマー認知症の原因の1つである「アミロイドβ」(異常たんぱく質)は、脳内のリンパ系に相当する「グリンパティック系」(グリア細胞リンパ系を合わせた造語)を介して、脳の外へ排泄されています。

 

睡眠不足だと、このしくみが正常に働かなくなり、アミロイドβの蓄積が加速して、認知症リスクが高まるようなのです。

 

また、睡眠不足で起きている時間が長くなりすぎると、脳の神経細胞の活動時間も長くなり、それがアミロイドβの余分な生成につながるという説もあります。

 

アミロイドβを排泄して認知症を避けるためには、睡眠不足を解消して、深い眠りを確保することが大切です

「寝る子は育つ、寝る高齢者は認知症になりにくい」のです

 

 

睡眠不足解消のコツをお伝えする前に、眠りについての理解を深めておきましょう。

ヒトには、日がのぼっている間に活動して、日が沈んだら休息するというリズムがあります。

このリズムをつくっているのは、脳にある「体内時計」です。

体内時計は、約24時間周期で体温や血圧などを制御しています。

 

体内時計の働きで眠りに落ちると、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という2種類の眠りを交互に繰り返すようになります。

ノンレム睡眠では、脳も身体も深い眠りに入ります。

レム睡眠では、身体は眠っているものの、脳は活発に活動しています。

 

ノンレム睡眠レム睡眠は90~120分の周期で繰り返しており、全体の7~8割を深い眠りのノンレム睡眠、残りをレム睡眠が占めています。

ちなみに夢を見ているのは、レム睡眠のときです。

 

ノンレム睡眠には、その深さで4つのステージがあります。

 

寝入ると、いきなりステージ4のいちばん深い睡眠まで到達します。

このときにホルモン分泌にかかわる脳の「下垂体」から、成長ホルモンが分泌されます。

子どもはもちろん、大人もこのタイミングで分泌されています。

 

アルツハイマー認知症の引き金となるアミロイドβを排泄する「グリンパティック系」の働きがとくに活発になるのは、やはり深い眠りのノンレム睡眠のときです。

眠りが深くなればなるほど、その作用は強いと考えられます。

 

睡眠時間が足りなかったり、深い眠りが十分にとれなかったりすると、アミロイドβの排泄が滞って異常なたんぱく質が蓄積しやすくなりますから、要注意です。

 

現在、日本人の5人に1人は、眠りに関してなんらかの悩みを抱える「睡眠障害」を抱えているとされます。

必要な睡眠時間には個人差がありますが、一般的には1日7~8時間程度。

睡眠障害があると慢性的な睡眠不足になり、眠りの質も落ちて深い眠りがとりにくくなります。

 

睡眠障害には、おもに次の4つがあります。

 

入眠困難……床についても30~60分以上寝つけない

中途覚醒……いったん眠りについても夜中に何度も目が覚める

◎熟睡障害……眠りが浅く、寝ているわりに熟睡できない

早朝覚醒……希望の時刻より早く目覚め、眠りが足らないのに眠れない

 

 

加齢が原因で、睡眠障害に悩む人割合は増えています。

加齢とともに日中の身体的な活動量が少なくなると、睡眠時間が減り、入眠困難中途覚醒早朝覚醒などが起こりやすくなるのです。

 

安眠へと誘う「メラトニン」というホルモンの分泌量が、加齢によって減ることも、その背景の1つにあると考えられます。

 

※ポイント なるべく日中は活発に身体を動かして夜は休息モードにしましょう

「一生ボケない習慣 より」

 

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老人の認知症の3割~5割を占めるアルツハイマー病の場合は、脳細胞が萎縮する病気です。

この萎縮を食い止めるためには、脳細胞を生成するためのタンパク(アミロイドβタンパク)合成、核酸(DNA)合成が順調に行われる必要があるのです。

ビタミンB12は、タンパク(アミロイドβタンパク)合成と核酸(DNA)合成の両方に深く関わっています。

 

ビタミン欠乏症が原因で、認知症になるケースがあるそうです。

ビタミンが欠乏すると、記憶障害、無気力、集中力の低下、妄想、錯乱の症状がみられるようになります。

東京武蔵野病院 副院長 田中信夫先生によれば、認知症患者の血中ビタミンB12は、通常の人より少ないそうです。

認知症の方に、ビタミンB12を投与すると、ボケ症状、特に感情障害、夜間せん妄、意欲、自発性の障害などの精神障害が軽くなるといわれています。

 

ビタミンの種類は、ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸

ビタミンB12や葉酸をはじめとするビタミンB群は、ミネラル、アミノ酸などの栄養素と協力し合っているため一緒にバランスよく摂ることがとても重要なのです。

現在60歳以上の人の20パーセントでビタミンB12の欠乏が見られということです。

これは歳をとると胃の機能が低下し、内因子の分泌が低下するからです。

長寿のためには、動物性食品を控えた方が良いという事ですが、一方では動物性食品を摂らないことからビタミンB12を摂取できなくなる恐れがでてきます。

また、高齢者が理由のはっきりしない神経症状を呈したら、ビタミンB12の欠乏を考えるべきだという学者もいます。

主に動物性食品にしか含まれないというビタミンなので、野菜中心の食生活の人や、ダイエットをしているなど食事の量が少ない人は、ビタミンB12を補った方が良いとされています。

加齢、胃の病気、ストレスなどでも不足します。

 

ビタミンB12について?

https://www.endokoro.com/